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渋谷知美著『日本の童貞』 第1章~第2章 を読んで(要約・意見)

今回も渋谷さんの『日本の童貞』について書きます。まず最初に、突っ込まれそうなのでお断りしておきますが、この本を取り上げるきっかけには、僕が童貞であるか否かということはまったく関係していません。(笑)ただ、若者文化を考えるうえで、この話題ははずせないと思ったのです。多くの若い人がこの話題を心の奥底で取り扱っているはずです。今日は第1章から第2章を読んで感じたことを書いていきたいと思います。

 

●第1章「新妻にささげる贈り物」としての童貞-1920年代の学生たち

渋谷さんが本書でお書きになったり、実際に僕の高校時代に、DQNたちの会話から聴こえたように、「童貞」であるということは「恥」ととらえられるのが現代です。しかし、この章であつかわれる1920年という時代には、童貞は「カッコイイ」「美徳」の概念でした。1920年代と今ではだいぶ時間に開きがありますが、若者が性欲で満たされているのには変わりありません(笑)1920年代(以下20年代)の学生たちには、将来の結婚相手に処女を求めるならば、自らも純潔であるべきだ と考える者が多かったようです。一方で、童貞であることに何の意味があるのか、さっさとこんなもの捨てちまいたい!と考える若者たちも居ました。前者の考えは、時代的には急進的であったようです。なぜなら、当時の風潮では女性は純潔であることは美徳とされていましたが、男性の場合にその概念はあてはめられていなかったからです。故に後者が、童貞に価値を見いだせなかったことにも納得できます。また、童貞であることを主張した人々の中には「性病」に感染することを恐れていた人もいました。花柳界(いまでいうフーゾク)に足を踏み入れることを嫌っていたのです。対して非童貞の若者たちの初体験相手の過半数はシロウトでした。現代では「素人童貞」なんて言葉があるくらいの状況ですが、20年代には素人で過半数が卒業できたのです。時代のギャップを感じます。ちなみに以下のツイートによると、最近の大学生男子の非童貞率と 20年代の非童貞率56.2%にはほぼ差がありません。この点に関しては時代に変化はないのでしょうか

この時代の学生の回顧録からは、異性との性的交渉だけが童貞卒業ではない、とみなす考えが社会の一部にはあったことがうかがえます。日本古来から続く「男色」文化が「異常」とみなされる寸前の時代でもあるので、このような考えがあったのでしょう。(ちなみに三島由紀夫の『禁色』は男色がテーマです)1980年代になると、この考えとは全く対照的にこういうケースは「笑い」へと変化させられます。(現在のオネエブーム、ホモォ... アッー などのホモネタブームの源流となってるのでは?)

 

●第2章 童貞のススメ

この章では、福澤諭吉巌本善治(巌本という人物は初めて知りました)が、当時頻繁に男性が「童貞」貞操を守ることについての言及を残していたようです。福澤は、当時の男性たちが日常生活で平然と自分の妾について話したり、フーゾクへ行った話をしていることを嘆きました。福澤は、男性というのはそのような性に関する話題を公然とするものではなく(しかし影ではやっていいという...)気品のある日本男児たることを訴えました。この背景には、福澤が明治維新から間もない近代国家建設期の人間であることが深く関係しています。彼は、日本人が気品ある者でなければ諸外国に顔向けができないし、文明開化とはいってもまだまだ野蛮な国家であると考えていたのです。童貞をすすめるというよりは、「品」に重点を置いていると思います。

もう一人の巌本は、「男の貞操」という言葉で童貞であることをすすめました。「男の」というのが頭につく場合、それは基本的に女性にあてはまる言葉を指します。(男泣き、男の涙、男の料理 土佐日記は...例外です...)巌本は、男性が貞操を守る場合、それは「気概」から来るのだとしています。自分が一生かけて愛する女以外のたいしたことないそこらへんの女なんかに、俺様の肉体は触れさせない! とでも言ったところでしょうか。そして、女性が貞操を守る理由はこれとは別に用意されています。巌本は、貞操を守るということを通してジェンダー化を図ったのです。

彼らのほかに、浅田一という医師や、他の医者・教育者たちは女性が一度セックスすると、男性の精液が血液に入り、血液検査で処女か否かわかる と断言している人々がいたことに驚きました。(読んでいて笑えました。)男性の場合、童貞喪失しても肉体に変化はないとも言っていました。(そりゃそうでしょうね。)

 

ほかにもいろいろ書きたいことはありますが、長くて且つ考えがまとまらないので、今回はここまでにします。第3章から書くかどうかは未定です。一気に感想を書いてこの本を終わらせるほうが確立高いです。読んでいただいた方にはお礼申し上げます。

日本の童貞 (文春新書)

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