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演奏会日記:東響 「現代日本音楽の夕べシリーズ第18回」早坂文雄没後60年コンサート

下記の演奏会を聴いてきました。
東京交響楽団「現代日本音楽の夕べシリーズ第18回 早坂文雄没後60年コンサート」
あまり早坂を知らない人にとっては良いプレゼン的な演奏会でもあったと思います。
1曲目:映画「羅生門」から真砂の証言の場面のボレロ
ラヴェルボレロに負けないボレロ。肝心要の打楽器がリズムを刻み、それに管楽器がメロディーを乗っけていく。シンプルなようでシンプルじゃない印象を持ちました。サックスが良く鳴っていて東響の管楽器陣は大活躍でしたね。
2曲目:交響的童話「ムクの木の話」(アニメーション映像付き)
スクリーンにアニメーションが映されながらの演奏。冒頭からメロディーが胸に沁みました。予習のビデオではわからなかったのですが、ピッコロがとにかく細かく動いていました。木管=鳥の鳴き声というのは古今東西の作曲家が用いていますが、早坂も同様に自然を巧みに描写しています。
一貫して思うのは、早坂は音の引き出しが多い人なんだろうなという事でした。ペトルーシュカを彷彿とさせる連符のパッセージやチェロを中心にしたピチカートの多用が、模倣の域を当然に飛び出しているあたりは敬服せざるを得ません。
こんなに愛情に満ちているような、音色の幅も広い音楽をよく書けるなぁ... 独学でここまで来た人が居るのか とかいろいろ考えながら聴いていたので、演奏中は目から汗が止まらず、目が真っ赤になってしまい一緒に行った方に笑われてしまいました(笑)
3曲目:交響的組曲ユーカラ
早坂文雄の最後の管弦楽作品。だけど終着地点ではない、旅の途中のような「進化」をしている最中の作品(なはず)。早坂が目指した「汎東洋主義」の音楽というのを実際に生で聴けたのは本当に興奮しました。調性を感じるメロディーは皆無と言ってよいでしょうか。12音列っぽい動きもありますし、同時代の作曲家に関心を抱いていたというならば納得です。打楽器の多用と、その複雑なリズムが憧れてしまいます。弦楽合奏の部分は、「風が吹き抜けていく」ような響きの余韻を持たせていてとにかく早坂文雄の力量を思い知らされました。
進化の途中だったであろう早坂作品が、ここで終わってしまったのは本当に悔しい限りです。後の世代の作曲家にモロで影響を与えている早坂文雄は、本当に日本の作曲史において巨星であったと思います。

同年代の仲間と話しましたが、早坂を含め近年演奏会で取り上げられる作曲家たちは、本当の意味でまだ「埋もれて」いないと思います。

問題はここからで、10年、20年先 作曲家のことを知っている人、研究者、演奏家が居ないと本当に埋もれてしまう気がしてなりません。
あまり言いたくないですが、20代で日本人作曲家について熱い人って片手に収まるくらいじゃないですか。それが本当に危ない。だからといって強引に興味を持ってくれとは言いません。
しかし、「日本人作品がプログラムに載っていると客が来ない」というのは脳天を通り越して立腹せざるを得ない状況です。
そろそろ聴衆も演奏家も聴かず嫌い・弾かず嫌いはやめたほうがいいと思います。どうにかしたいですが、僕自身をどうにかしないと前に進めないですね。